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特殊鋼の最近のブログ記事

皆さんは特殊用途鋼のステンレス鋼材について次の様に記憶されているのでは
ないでしょうか。(ステンレス鋼とは全体の12%以上クロムを含んだ鋼)

SUS304  オーステナイト系
SUS430  フェライト系
SUS410  マルテンサイト系

上記の様にそれぞれとついてますよね。オーステナイト等の言葉は鋼の組織
表しているもので、ステンレス鋼に限定したものではありません。それぞれの組織
名は発見した人名等が付けられています。代表的なものについて記載しておきます。

オーステナイト
 FeとCの合金において、温度が723℃以上において
 安定的な組織で、常温では存在しない組織であるが、
 NiやMnを多く含む事によって安定する組織です。
 
フェライト
 鉄(Fe)に最大0.02%のCが含まれた組織で、ほぼ純鉄
 に近く、鉄鋼組織の中で最も軟らかく、延性も大きい。
 ラテン語のFerrum(フェルーム)からきています。
 
マルテンサイト
 オーステナイト組織を急冷した時に出来る組織で硬くて脆
 い組織です。
 
トルースタイト
 マルテンサイト組織を400℃で焼戻しした時に出来る組織
 軟らかく脆さがとれた組織です。
 
ソルバイト
 マルテンサイト組織を600℃で焼戻しした時に出来る組織
 粘さが発揮される組織です。

それは材料の焼入れ性の問題だと思います。
焼入れ性とは熱処理をした場合材料の表面から硬化する深さを言います。
同じ材質でも太くなるほど焼きが入りにくくなります。この様に質量の影響
を質量効果(マスエフェクト)と言います。
線径の違う材料を焼入れした場合の硬化の様子を下記に示します。
線径が太くなるほど芯部まで硬化しにくい事がわかります。

 

q17_1.gif 

 

特に炭素鋼(SC材)の場合この影響が大きく、構造用鋼(SCM435等)は
合金元素の働きにて影響が少ないです。
この様に太さの違いにより焼入れ性をはじめ機械的性質の数値が変
わってくるためJISでは材料試験片の径をインチ(25.4ミリ)に規定されています。

JIS G 4052より抜粋
  焼入れ端からの距離(mm) 
11 15 20 25 40
SCM435H 上限 HRC54 51 48 45 39
下限 42 37 32 30 27
SCM440H 上限 HRC58 56 55 53 47
下限 48 43 38 35 32

 *JISに規定されている強度区分10.9の芯部硬さはHRC32から39です。
*上記の数値によると線径50Φ以上になるとSCM435では10.9がクリア出来なくなってくる様ですね。

皆さんよくご存知のスプリングワッシャー(ばね座金)と言っても、[No12]でご紹介した
特殊用途鋼のばね鋼材であるSUPを使用しているわけではありません。皿ばね
座金や皿ばね類にはSUPや今までよく登場してきました機械構造用炭素鋼(SC
材)が使用されています。
スプリングワッシャーはJISG3506の硬鋼線材の中でSWRH57A,B~77A,Bの使用を
JISで規定されています。化学成分を下記にJISより抜粋しておきます。

単位%
  C Si Mn P S
SWRH57A 0.54~0.61 0.15~0.35 0.30~0.60 0.030以下 0.030以下
SWRH57B 0.54~0.61 0.15~0.35 0.60~0.90 0.030以下 0.030以下
SWRH62A 0.59~0.66 0.15~0.35 0.30~0.60 0.030以下 0.030以下
SWRH62B 0.59~0.66 0.15~0.35 0.60~0.90 0.030以下 0.030以下
SWRH77A 0.74~0.81 0.15~0.35 0.30~0.60 0.030以下 0.030以下
SWRH77B 0.74~0.81 0.15~0.35 0.60~0.90 0.030以下 0.030以下


非常に高カーボン(炭素)の材料ですね。当然、材料特性を活かすために、
焼入れ、焼戻しをおこなう為ベーキングは必要です。が現行ではM16用以下
(弊社主力メーカー)の材料は伸線工程でパテンチングと言
う熱処理をおこなう事
によって硬く、粘りのあるばね性に富んだ材料に
するので、スプリングワッシャーに成形後改めて焼入れ、焼戻しはおこなわないので、
めっき工程でベーキングは必要有りません。この件に付いてはJISB1251 
ばね座金の10項に『パテンチング処理材を用いた場合は、もろさ除去の処
理を省略してもよい。』
と明記されています。

但し、全てのメーカーがパテンチング処理材を使用しているわけ
 ではないのでご確認が必要です。

色々な原因にて鋼の粘り強さが低下し、小さな力で折れたり、割れたりし易い事です。
これを脆性と言い折れたりする事を脆性破壊と言います。
鋼は通常、低炭素で軟らかいと延びやすい=延性材料、高炭素で硬いと脆い=脆性材料となり
ますが、より硬さ、強さ、粘りや耐熱、耐食性等を求めるためにレアメタルであるニッケルやモリブデン等を
添加した合金鋼である特殊鋼はどちらでもなく粘り強い=靭性材料でなければなりません。
その為に熱処理をする訳ですが、厄介な事に熱処理が原因で脆くなる事もあります。
おもな原因について紹介しておきます。(他にも色々あります。)

メッキ脆性
 皆さんよくご存知だと思いますが電気鍍金等の鍍金処理や酸洗いの工
 程で鋼の中に水素が入り脆くする事で水素脆性の1つです。対策はベーキング
 処理をおこなう事です。([No3]に記載済み)
  
水素脆性
 鋼に水素が入るのは鍍金の時だけではありません。特に注意が必要
 なのは、腐食です。結露等による水分が空気中の酸化物と化合して鋼を
 腐食します。この時に水素が入り脆化がおきます。遅れ破壊([No10]に
 記載済み)
の大きな原因になります。
  
焼戻し脆性
 焼入れにて硬く、脆くなった鋼を粘り強くする為の焼き戻し工程において、
 焼き戻し温度から徐冷するとかえって脆くなります。対策としては、焼き戻し
 温度から急冷(水冷)する事が効果的です。
  
低温脆性
 皆さんも寒くなると身体が硬くなってしまいますよね。鋼も同じで硬く、脆く
 なり -20 ~ -30℃で急激に脆くなってしまいます。SUS304に代表される
 オーステナイト系ステンレスは-196℃まではOKとされています。

[No13]で、「硬さはねじ部品の引張り強さや耐力等の機械的性質を知る上でもっとも簡
単なもので、よく利用されています。」と記載しましたが、下記に関係を簡単に示します。

 

q14_1.gif



ねじ部品は一般的に締結部品として引張り強度が強く硬い方が良いわけですが
硬すぎてもだめです。約HV500までです。ここまでならば引張り強さと硬さは比例関係
にありますがこれ以上はかえって脆くなります。
ねじ部品は脆くてはつかいものにはなりません。使用目的により表面だけをもっと
硬くする事(高周波焼入れや浸炭焼入れ等)はありますが、延性(伸び)も重要です。
延びが必要と言っても、飴の様に軟らかく僅かな力で伸びても困るわけです。
求めるのは粘り強さですその為に焼入れと焼戻しを行なうわけです。
特に焼戻しの温度が重要です。焼戻しの温度差により8.8や10.9、12.9の強度
区分の規格値に入る様にします。当然鋼種により温度は変わります。
人も同じですね。筋肉質で硬いだけではなく柔軟性も必要ですよね。

 

硬さはねじ部品の引張り強さや耐力等の機械的性質を知る上でもっとも簡単な
もので、よく利用されています。工学上の硬さの定義は「物体の硬さとは、それが他の
物体によって変形を与えられようとするときに示す抵抗の大小を表す尺度である」と
されています。ちょっと難しいですが、簡単に言えばねじ部品にダイヤモンドや超合金等
尖った硬いものを荷重をかけ押し込みその時にねじ部品に付くくぼみの深さ
や面積を測定する
事で硬さを表現しています。よく使われるものを簡単に記載します。

用語 記号 使用するもの
ブリネル硬さ HB 一般に直径10ミリの鋼球
ロックウェルC硬さ HRC 先端半径0.2ミリで先端角120度のダイヤモンド゙円錐
ビッカース硬さ HV 対面角が136度のダイヤモンド゙四角すい
ショア硬さ HS 先端にダイヤモンド半球をつけたハンマー

注意
それぞれ測定方法が違うわけですから、表面粗さだけでも変わる事があるので
同一のねじ部品は同じ硬さで測定しなければ、ユーザーとメーカーでのトラブルの原因に
なります。
よってお互いを換算することは正しい事ではありませんが、実用上は差し
支えないので、大体の目安をつけるのには便利です。下記に記載しておきます。

HS=HB/10+12  
HS=HRC+15  
HB=HV          (あくまでも目安です)

鋼とはFeにC(炭素)が入ったものですが、その他にもケイ素、マンガン、燐、硫黄も入っています。
しかし微量である為に、多く含まれるCから炭素鋼と呼ばれています。
この炭素鋼に特殊元素であるクロム(Cr)、ニッケル(Ni)、モリブデン(Mo)等が入りそれぞれ特別
な性質を持つ鋼を特殊鋼と言います。代表する特殊元素の性質については、[No1]に記載済みです。
ご確認下さい。
下記の表にJISに基づいて分類しました。表を見て、?って思われた方もおられたと思い
ますが、皆さんよくご存知のSUS304に代表されるステンレス鋼材も特殊鋼の1つなんですよ。
と、言う事で特殊用途鋼であるステンレス鋼材やばね鋼材(SUP)等についても今後取上げて
いきたい と考えています。

大別 小別 JIS記号 大別 小別 JIS記号
機械構造用
合金鋼
(SA材)
Ni-Cr鋼材 SNC 工具鋼
(SK材)
炭素工具鋼材 SK
Ni-Cr-Mo鋼材 SNCM 合金工具鋼材 SKD  SKS
Cr 鋼材 SCr 高速度工具鋼材 SKH
Cr-Mo鋼材 SCM 特殊用途鋼
(SU材)
ステンレス鋼材 SUS
Mn 鋼材 SMn 耐熱鋼材 SUH
高温用合金鋼ボルト材 SNB ばね鋼材 SUP
機械構造用炭素鋼
(SC材)
SC 快削鋼材 SUM
高炭素クロム軸受鋼材 SUJ

SNB7とは 耐熱、高温用として造られた材質で他により耐熱効率を高める
為にバナジウムを添加したSNB16もよく使われています。
約400℃位まは機械的性質に変化はありません。
機械的性質の規格値は   引張り強さ  860N/mm2    耐力  725N/mm2 
硬さはHB255~321です。
この材質はASTM(米国材料試験協会)規格として1902年にアメリカの業界規格と
して制定されたもので日本国内でも流通していましたが、JISでは高温用合金鋼
ボルト材とし1974年にJIS G 4107に制定されました。

ASTM規格とJIS規格の対照表
  ASTM規格 JIS規格
ボルト A193  grade  B7 G4107   SNB7
ナット A194  grade  2H G4051   S45C
ボルト A193  grade  B16 G4107  SNB16
ナット A194  grade    4 該当なし
ボルト A193  grade  B8 G4303  SUS304
ナット A194  grade   8 G4303  SUS304
ボルト A193  grade  B8M G4303  SUS316
ナット A194  grade  8M G4303  SUS316

上記については100%同じではなく、同等としてお考え下さい。 

  疲労破壊 遅れ破壊
現象 静的荷重を受けているボルトが振動や曲げ荷重を繰り返し受けるとその荷重が弾性域内であっても、その後突然破断します。
(動的疲労破壊)
安定して静的荷重を受けているボルトが時間の経過と共に一定の荷重内において何の前兆も無く突然破断します。
(静的疲労破壊)
原因 ボルトが振動等の動的荷重を繰り返し受けているうちに、ボルトの一部に肉眼では発見出来ない様な微細な亀裂が入り動的荷重の繰り返しにより亀裂が広がり荷重に耐えきれなくなり破断します。 基本的には水素脆性による材質の脆化現象です。一般的に高強度のボルトほどこの可能性が高くなりますので注意が必要です。
破壊箇所 殆どがねじ部で特におねじとめねじがはめあってる第一山あたりでの発生が多いとされています。 不完全ねじ部、おねじとめねじがはめあってる第一山部、頭部首下のR部分等応力が集中しやすい部分
対策と注意点
  1. 細径のボルトを沢山使用する。
  2. 細目ねじを使用する。
  3. 熱処理後に転造したボルトを使用する。
  4. おねじとめねじのはめ合い長さを長くする。
  5. 適正な初期締付けをおこなう。
  6. 増し締めの実施。
基本的に水素脆性が原因であるため、水素が入らない様にする、又除去する事です。
  1. 鍍金工程で入る事が多いので、ベーキング処理を必ずおこない、強度区分が12.9以上のボルトには鍍金をしない事。
  2. 使用環境により、電食等の腐食による水素脆性の可能性もあるため塗装や油塗布等の防錆処理を十分におこなう事が必要です。


熱処理には[No4]でご紹介した焼ならしや焼なまし等の一般熱処理法とは別にねじ関連部品の表面のみを硬く丈夫にする為の表面熱処理法があり表面硬化法と言われており、窒化処理もその1つです。
表面硬化法には、物理現象を利用するものと、化学反応を利用するものがありますが[No8]の浸炭焼入れと同様化学反応を利用するもので、代表的な窒化処理について説明させていただきます。

窒化処理とは
鋼の表面に窒素(N)をしみ込ませ硬くする方法で窒素が入るだけで硬くなるので、焼入れ、焼き戻しはおこないません。
その為変形は極めて少ないと言う特徴があり、精密部品におこなう事が多い様です。代表的な方法としてガス窒化、ガス軟窒化、そしてみなさんもご存知のタフトライド(イソナイトに商標変更)に代表される塩浴窒化があります。特徴を示します。

窒化方法 窒化の反応 材質 表面硬さ 硬化層深さ 処理時間
ガス窒化 アンモニア(N)ガスを使用し、発生した窒素が鋼中に入ります 高級鋼
SKD SCM等
高い
Hv700〜1200位
深い
約0.1〜0.3mm
長い
25〜100時間位
ガス軟窒化 アンモニアと浸炭性のガスの混合ガスを使用し、窒素と炭素が鋼中に入ります 低級鋼
SPCC 炭素鋼等

低い
Hv400〜700位
浅い
約8〜15μm
短い
90〜150分位
塩浴軟窒化 シアン酸塩と空気との反応によって発生した窒素が鋼中に入ります 高級鋼 Hv700〜1200位 浅い
約8〜15μm 
短い
20〜120分位
低級鋼 Hv400〜700位
※上記の数値はおおよその目安です。材質により差異があります。

熱処理には[No4]でご紹介した焼ならしや焼なまし等の一般熱処理法とは別にねじ関連部品の表面のみを硬く丈夫にする為の表面熱処理法があり表面硬化法と言われており、浸炭焼入れもその1つです。
表面硬化法には、物理現象を利用するものと、化学反応を利用するものがありますが[No7]は物理現象を利用するものについて説明させていただきましたが、今回と[No9]に分けて化学反応を利用するものについて説明させていただきます。

浸炭焼入れとは
鋼が焼入れによって硬化する為には、ある程度の炭素が必要です。この為、通常のままでは焼入れの出来ない低炭素鋼(S15CやS25C)等の表面にC(炭素)をしみ込ませ高炭素とした後焼入れ、焼き戻しをおこなう事によって表面は硬く対磨耗性に優れ、内部は低炭素鋼のままの軟らかい状態で靭性に富んだ鋼にする処理で、自動車部品や機械部品に多く使用されています。種類としては液体浸炭、ガス浸炭、固体浸炭等がありますが最近では、真空技術を用いた真空浸炭等もありますが、ガス浸炭が多く使われている様です。処理温度と時間については鋼種にもよりますが、低炭素鋼では910℃~950℃×2Hr前後で多く使われています。

※処理を依頼する場合は、表面硬さと浸炭深さが材質と炭素量によって変わる為、指定が必要です。

熱処理には[No4]でご紹介した焼ならしや焼なまし等の一般熱処理法とは別にねじ関連部品の表面のみを硬く丈夫にする為の表面熱処理法があり表面硬化法と言われており、高周波焼入れもその1つです。
表面硬化法には、物理現象を利用するものと、化学反応を利用するものがありますが今回は物理現象を利用するものについて説明させていただき、[No8]で化学反応を利用するものについて説明させていただきます。

高周波焼入れ
電磁誘導加熱と言う原理を使用する方法ですが、これは皆さんよくご存知のIH調理器で鍋を熱するのと同じで、高周波電流を流す導線をIH調理器では器具に埋め込んであってその上に鍋をのせる感じですが高周波焼入れの場合は導線をコイル状にしその中にねじ部品を入れ高周波電流を流すと、表面のみに電流が流れて加熱されます。その後急冷する事により焼きが入ります。焼入れ後はもちろん低温(180〜200℃)での焼き戻しをする事によって硬く、磨耗や疲労に強い表面になる訳です。
特長として次の様なものがあります。

  1. 加熱時間が短く、表面の脱炭や酸化が少ない。
  2. 直接加熱のため、熱効率がよい。
  3. 必要な部分だけの焼入れが可能。(六角穴付止ねじの先端部だけ等)
  4. 冷却速度が速く、焼きが入りやすいため安価な機械構造用炭素鋼(S25CやS35C等)が使用できる。
  5. 作業の自動化が容易である。

 

炎焼入れ
ねじ部品の表面に直接高温の炎をあて加熱し、急冷する事によって表面を硬くする方法です。
一般にはガスが使われ炎の温度が3500℃と高い理由で、酸素-アセチレン炎がよく使用されています。

※どちらの方法も表面硬さとしては大体ですが、HRC=15+100×%C(炭素)量で求める事が出来ます。

それは酸化鉄皮膜であり、黒色酸化皮膜と言います。一般的には下記の3種類が使用されております。皮膜は厚いほど耐食性はありますが、一般的に1μ〜2μ程度であり多孔質な皮膜であり、処理後には防錆油を塗布する事により、通常の屋内環境に対応した耐食性を確保させています。市販品においては、下記のテンパーカラーがコストの面からも多く使用されている様です。

image004.gif



※黒色酸化皮膜を処理したボルト等で表面が赤茶色のさびに見えるものがありますが、これも酸化鉄の一種であり乾燥状態あるいは防錆油が塗布された状態ではさびに進展する事はありませんが、さびは酸素と水分にて発生しますので、管理方法や使用環境も重要です。

※時折、上記の黒染処理の事をパーカー処理と記載された図面等を見かけますが、パーカーとはパーカーライジングの事で別物です。燐酸塩処理と呼ばれており、皮膜の主成分は燐酸亜鉛や燐酸マンガンです。色も黒や灰色をしています。防錆や塗装の下地の目的に処理される事が多い様です。  

JIS規格の強度は常温(10℃〜35℃)で規定されています。
使用温度が高くなると、引張り強度が低くなり破断の危険性があります。


又使用温度が低くなると靭性(ねばさ)が低下します。一般のねじは耐熱性、耐寒性、耐食性について保証されていませんので、相手部材との関連も含めて注意が必要です。
下記の表は常温を超え300℃に至るまでの5段階におけるだいたいの数値で、温度の上昇にともなって機械的性質が低下する目安を示したものです。参考にして下さい。

強度区分 温度℃
+20 +100 +200 +250 +300
下降伏点又は耐力N/mm2(kgf/mm2)
8.8 640(65.3) 590(60.2) 540(55.1) 510(52.0) 480(48.9)
10.9 940(95.9) 875(89.2) 790(80.6) 745(76.0) 705(71.9)
12.9 1100(112) 1020(104) 925(94.3) 875(89.2) 825(84.1)

耐熱、高温用としては材質がSNB7やSNB16のボルトがあり約400℃位までは
 機械的性質に変化はありません。
 規格値は 引張強さ 860N/mm2 耐力 725N/mm2です。
 SNBについては、又改めてさせていただきます。

機械構造用炭素鋼や合金鋼を使用しねじ部品を製作する場合、成形する為に圧造や鍛造等の加工方法を使用しますが、加工し易い硬さに調整しており、成形後、又加工後に本来の材料特性である硬さや粘さを活かしたねじ部品にする為に熱処理がおこなわれる事が多いです。その代表的なものを紹介します。

(H) 焼入れと焼戻し(調質)
焼入れとは、鋼を加熱し急速冷却する事によって鋼の硬度を上げる操作を言う。硬くなるが脆くなります。
焼戻しとは、焼入れ後脆く組織的にも不安定な鋼を、組織を安定化させ本来の材料特性を活かし引張り強度、耐力、伸び等の機械的性質を向上させ、硬くて粘り強い鋼にする為におこなう熱処理です。

(N) 焼ならし(焼準)

目的は鋼の組織の改善です。
高温で鍛造等で成形すると、加熱、冷却が部分により不均一になり異常組織となり、結晶粒の粗大化及び不ぞろいがおきます。これを本来の組織に戻す為の熱処理です。

(A) 焼なまし(焼鈍)
目的は鋼の軟化と組織の改善です。
鉄や鋼を加工し易く軟化する事と結晶組織の調整をする為の熱処理です。
焼なましの中で完全焼なまし、応力除去焼なまし、球状化焼なましがねじ部品には多く利用されます。

a 強度区分12.9のボルトには電気メッキを絶対しないで下さい。    
  ベーキングをしても遅れ破壊の危険性があります。

  ボルトメーカーに、メッキ用(強度区分10.9)に処理してもらって下さい。

b 強度区分10.9のボルトには水素脆性除去の為に必ずベーキングをおこなって下さい。
  しかし六価ユニクロやクロメートからのつけかえはおすすめ出来ません。

c 強度区分8.8以下のボルトには一般的にはベーキング処理はおこなっていない     
  事が多い様です。
  別製作品については、材質等諸条件もあり使用者、ボルトメーカーとの打合せが     
  必要な場合もございます。

水素脆性(すいそぜいせい)とは
 皆さんは学生時代に元素の小さい順を『スイヘリーベボクノフネ』って覚えた     
 記憶ありますよね。その一番小さい元素の水素が鉄を中心にその他の金属     
 (NiやMo等)の結晶である鋼の中に、めっき処理や酸洗いの時に入り、鋼を     
 脆くし、割れの原因になる事です。 
    
ベーキング処理
 水素脆性の原因となる水素を取り除く処理の事です。   
 メッキ後できるだけ早く、200℃前後で2〜4時間程度加熱し水素を放出させます。

※水素脆性のおこらない表面処理
 ダクロダイズド処理、ジオメット処理(ノンクロムダクロ)であれば   
 強度区分12.9のボルトにも処理できます。

 

 q2_1a.gif
8.8ボルトの場合
前の数字の8は引張り強さで最小800N/mm2、その1/100を8と表示しています。
後ろの8は耐力を表し、引張り強さ800N/mm2との比率が80%の保証を表示、
すなわち、800×0.8=640N/mm2となります。
 
10.9ボルトの場合
前の数字の10は引張り強さで最小1040N/mm2、その1/100を10と表示しています。
後ろの9は耐力を表し、引張り強さ1040N/mm2との比率が90%の保証を表示、
すなわち、1040×09=936N/mm2となります。

 

 


8Tや11Tという使用もまだ見受けられますが、JISで規定されています8.8,10.9を御使用下さい。
又、時折8.8Tや10.9Tという表示を見かけますが最後のTは不要です。

q2_2.gif

 

今回は機械構造用炭素鋼、合金鋼についてお答えします。

1.gif

 

※特殊鋼に使われる主な添加物と効果

Mn マンガン 粘さを損なわず、強さと硬さを増す。
Cr クロム 磨耗に強くなる。錆びにくくなる。
Mo モリブデン 粘さが増す。高温下での強さ、硬さが増す。
Ni ニッケル 粘さと強さが増し、熱にも強くなる。
Crと併用で錆びにくくなる。